シクロクロスレースでは、充分に整地されていないコースを走ることから、レース中のメカトラブルが付き物です。そのため、コースの途中にメカニカルサポートのためのピットエリアが設置されています。ここでは、その「ピット」について解説します。
関西シクロクロスでは、個人参戦であってもメカトラブル時にレースを続けてもらうことを最優先に考えており、ピットに無人で機材だけ置いてても良いよ、という方針を取ってきました。今後もそれは変わりませんが、最近は置かれる機材がかなり多くなっています。
ピットにいくつか共用スタンドを置きますので、なるべく自転車や車輪を寝かさないように吊るして置いてください。
また、必要な時間以外はピットに機材を置かないようにしてください。レース後のお忘れ物にもご注意ください。
ピットの場所
ピットの場所は、コース図に記載されています。ピットレーンは、競技レーンから分岐、合流する構造になっており、その始まりと終わりの場所に黄色い旗が設置されています。ピットレーンには、作業をするためのピットスペースが隣接しています。ピットレーンは走行しても良いですが、ピットスペース内を走行してはいけません。
1つのピットスペースの両側が、2本のピットレーンで挟まれている場合をダブルピットと呼びます。1つのピットスペースの片側に、1本のピットレーンが接している場合をシングルピットと呼びます。ほとんどのコースは、1つの周回で2回ピットに立ち寄れるように設計されており、シングルピットの場合は2ヶ所設置されていることが多いです。
- ダブルピットの例
- シングルピットx2の例
ピット以外のコース上でやって良いこと悪いこと
レース中にメカトラブルが起きたとき、まず選手がコース上で自力で修復を試みることは、他の選手の妨げにならないのであれば、どの場所でやっていただいても全く問題ありません。その際、あらかじめ選手自身がスタート時から携帯していた工具や部品を使用することも、全く制限されていません。
ですが、ピット以外のコース上で他の選手・サポートスタッフ・観客等から工具や部品を借りたり、修復の手助けを受けたりすることは、シクロクロスでは明確に禁じられています。これらの作業はすべてピットエリアで行なわれなければなりません。
補給についても同様です。あらかじめスタート時から給水ボトルをバックポケットに入れておいたり、ボトルケージに差し込んでおいたりして、それらをレース中にコース上で飲むといったことは、全く制限されていません。ですが、ピットで新たに給水ボトルなどの補給を受ける方法には、制限があります(後述)
選手がピットでやって良いこと悪いこと
ピットレーンに入った選手は、誤って入ってしまった場合を含め、毎回必ずメカニカルサポートを受けなければなりません。メカニカルサポートには、自転車や車輪の交換の他、ディレーラーの調整、どこかのねじの増し締めなど、あらゆる機械的作業が含まれます。
何の作業もせずピットレーンを通過しようとした選手は、必ず審判が制止します。審判の制止を振り切ってピットレーンを離脱した場合は、意図的かどうかを問わず規則違反とされる可能性があります。ですが、これはピットレーンからの離脱の可否を毎回審判が意思表示するということを意味しません。何らかの作業をして、制止されなければそのままレースに戻ってください。
- ピットレーンに入ったものの、サポートスタッフがいなかったため通過を制止された例。他チームのスタッフが「メカニカルサポート」を行なったため、ピットレーン離脱を認められている。
Hartverscheurend om te zien: achtervolgster @x_shirin rijdt lek en heeft geen nieuwe fiets klaarstaan in de eerste materiaalpost. 😭 #TelenetSuperpresige #SPDiegem pic.twitter.com/haycCE7CuW
— SuperprestigeCX (@SuperprestigeCX) December 29, 2019
ピットでの唯一の補給方法
シクロクロスのピットでは、給水ボトルだけを受け取るなど、単純な補給は認められていません。ですが、あらかじめ給水ボトルや補給食を装着した自転車への交換に限り、唯一の補給の方法として認められています。それ以外の方法での補給は、同時に別のメカニカルサポートを受けていたとしても認められていません。
UCI statement about feeding in the pit areas at Cyclo-cross races(2015.9.10)↗
スタッフがピットでやって良いこと悪いこと
関西シクロクロスのシリーズ戦では、サポートスタッフにピットへの立ち入りを許可するための腕章や許可証等を、特に発行しておりません。また、ピット内での選手の応援や写真撮影も、特に強く制限しておりません。ですが、選手がピットに入ってきたときにサポートの邪魔になることがないよう、充分に注意してください。サポートスタッフ、観客を問わず規則違反となる可能性があります。
琵琶湖グランプリ・二色の浜グランプリでは、男女エリート・ジュニアカテゴリーに限りサポートスタッフ用の腕章を発行し、装着していない者の立ち入りを禁じます。また、置かれる機材についてもUCIルールに適合しているかどうかを確認します。
ピットに置いて良い物
すべての選手に専属のサポートスタッフがついているのが理想ですが、関西シクロクロスではそんな選手ばかりではないことも理解しています。工具、部品や代輪、代車のみをピットスペースに置いても構いません。異なるカテゴリーの選手同士で共通に使える物を置いても構いません。ですが、競技中の選手同士で互いに自転車や車輪を交換してはなりません。
ピットスペースは面積が限られてますので、その置いておく物が使われないカテゴリーのレース時間では、極力その物を置かないようご協力をお願いします。そして一番大事なことですが、レース終了後は持って帰るのを忘れないように!!
- ピットに置く物は最小限の数、最小限の時間で!!
ピットインの練習
幸運にも代車とサポートスタッフの両方を用意できたなら、試走時間にピットインの練習をしておきましょう。レース本番でいきなり代車への乗り換えをするのは事故のもとです。事前に適正なギア段とペダル位置を決めておきましょう。
洗車
関西シクロクロスでは、ほとんどの会場でピット付近に共用の洗車機や水は用意していません。洗車のためにそれらが必要な場合は、各自で用意してください。その際は、廃水がたまったり、コースに流れ込んだりしないよう充分注意してください。
琵琶湖グランプリ・二色の浜グランプリでは共用の洗車機を設置します。
ピットのところでUターン
原則として、コース上のいかなる場所でも逆走することは禁じられています。ですが唯一の例外として、ピットレーンに並行する競技レーンに限り、他の選手の妨げにならないように停止、Uターンし、後戻りをしてピットレーンに入ることができます。これは、選手から見えない部分のマシントラブルをサポートスタッフが発見し、選手に伝えた場合等を想定したルールになっています。
その他のコース上やピットレーン内では逆走できません。したがってサポートスタッフが呼びかけたとしても、競技レーン上を走行していた選手がピットレーンの終了を示す黄色い旗を通り過ぎてしまった場合は、Uターンすることはできませんし、ピットレーン出口から入場することもできません。次のピットレーン入口までコース上を進まなければなりません。
同様に、誤ってピットレーンに入ってしまった場合に、ピットレーンを逆走して入口から出ることはできません。
- ピットレーンに並行する競技レーンでメカニカルトラブルが発生し、Uターンしてピットレーンに入った例。
A rag gets stuck in Van Aert’s wheel while riding past the pitzone. The Belgian champion is forced to turn back and change his bike. He loses 17 seconds in the process. #CXWorldCup pic.twitter.com/OcatzpFcoP
— UCI Cyclo-cross World Cup (@UCIcyclocrossWC) December 11, 2022
- やむを得ず逆走する場合は、周囲をよく確認すること。他の選手を妨害したとして、のちに失格となった例。
Eerste maandag na de vakantie, niet makkelijk. Succes allemaal! 🙌 pic.twitter.com/MhEI67tN8w
— Sporza 🚴 (@sporza_koers) January 6, 2020
とりあえずピット
このように、ピットを適切に利用することで、なにかメカトラブルが起きたときでもレースを継続することができます。
「オレは単騎参戦だから」という人も、メカトラブルが起きたときは、とりあえずピットに入ってみてください。幸いにして関西シクロクロスは参加者数が多いので、ピットにいる誰かがなんとか助けてくれるかもしれません。
そんなスポーツの助け合いの文化が大好きです。