2023年10月22日、和歌山県御坊市で開幕した2023-2024シーズン関西シクロクロス。関西各地10戦の熱い闘いを終え、2024年2月12日に千秋楽となる第11戦 二色の浜を迎える。
総合優勝は決まったが、2位以下は混戦のE1。毎戦熱い闘いが繰り広げられる関西シクロクロストップカテゴリーE1の展望を、上位選手たちのコメントと共に紹介しよう。
賞金を懸けた2位争い
10戦終了時点の上位5名
- 1位:川村誠 | チーム36隊 | 1280点
- 2位:笛木睦紘 | 北山杉レーシング/明雅屋 | 986点
- 3位:村田憲治 | 岩井商会レーシング | 974点
- 4位:腰山雅大 | All-City Cycles / 662CCC | 854点
- 5位:横山航太 | ペダル | 850点
第10戦 桂川を終え、シーズンを通じて4度表彰台に上った川村誠(チーム36隊)が、唯一1,000点を上回る1,280点でランキング1位を確定させ、2017-2018シーズン以来の総合タイトルを獲得した。
総合優勝が決まったからといっても、シリーズ戦がそこで終わったわけではない。2位の笛木睦紘(北山杉レーシング/明雅屋)を筆頭に、5位の横山航太(ペダル)までの差は132点。実に4名の選手に総合ランキング2位の可能性がある、混沌とした千秋楽が始まる。
ここで、今季の関西シクロクロス年間表彰で授与される賞金金額を見てみよう。1位から5位までを抜粋すると、以下のような賞金金額だ。
- 1位:¥50,000
- 2位:¥30,000
- 3位:¥10,000
- 4位:¥5,000
- 5位:¥4,000
2位と5位の差は¥26,000の開き。賞金のかかった年間ランキングが、残った1戦だけで決まる。となれば、ここはシーズン一番の走りで悔いのない千秋楽を終えたい、と思うのが、選手であろう。
関西シクロクロスシリーズ戦E1、各レースで付与されるポイントは以下の通り。
- 1位:200点
- 2位:160点
- 3位:140点
- 4位:120点
- 5位:110点
6位以上なら100点以上が与えられるため、二色の浜で大きく順位を落とさない限り、大きく順位が変わるということはないものの、フィニッシュまでわからないのがレース。砂という路面は、E1上位の選手にとっては知った路面だが、ひとつラインを間違えるとあっという間に差が広がるのも砂の怖いところであり、また面白いところである。
総合優勝の"すくみず"川村誠 その動きに目が離せない
不調の昨季とは違い、シーズンを通して安定感のある走りを見せた川村誠(チーム36隊)。2024年1月の全日本選手権でも、男子エリートでフルラップ12位というリザルトを残したのが記憶に新しい。
自身のコンディションもさることながら、チームのサポートも安定したレース展開に貢献。ピット、コース脇の各所でレースを見守る、チームメンバー全員で勝ち得たタイトルだといえる。
すでにタイトルを確定させているため、総合ランキングを目的に走ることはないが、実力が拮抗する上位の選手たちの間に割って入ることが十分に考えられる。
総合ランキングを一つでも上げたい選手にとっては、川村の位置が非常に気になる。川村よりも前、そして川村より後ろにライバルという位置取りでフィニッシュしたいことだろう。
いずれにせよ、総合力で勝ち取った今季のタイトル。千秋楽二色の浜も、チーム36隊のもと、安定した走りでフィニッシュすることは間違いない。
本人コメント
シクロクロスを始めて15年、今は関西CX総合優勝を最大の目標として毎年レースに取り組んでいます。
夏場に距離を乗り込んだおかげか今季は好調でした。序盤に連続で表彰台に乗り、同じく総合を狙う村田選手、笛木選手にリードを築きランキング首位に。全日本が終わって強豪選手が参戦してくるシーズン後半戦も着実に結果を残し、残すところ1戦にして、6年ぶりのシリーズランキング1位を確定させました。
今年は11戦で争われる関西CX。総合狙いでは一発の速さ以上に、レースを落とさないことが求められます。
関西では毎週レースが開催されるため疲労も溜まりがちです。昨年は途中で調子を崩したので、今年は「怪我をしない」「体調を崩さない」「機材を壊さない」の「3ない運動」を意識してレースに臨みました。回復力も低下してくる年頃なので練習量も調整し、シーズンを通して調子を維持できたと感じています。
最終戦は初開催の二色の浜。最後だけは「一発の速さ」を追求しようと思います。
追いすがるベテラン勢を抑えたい笛木睦紘
現在ランキング2位の笛木睦紘(北山杉レーシング/明雅屋)は、今季フロントローでのスタートから、常に上位での展開を重ねてきた。
シクロクロスデビューシーズンの2020-2021にC1昇格、以来4年目の今季は優勝こそないものの、レース中ランキングトップの"先輩"川村をリード、また争う姿も見られた。
第3戦の烏丸半島では、自身初の関西シクロクロスE1/C1での表彰台を獲得。表彰台はこの一度だけだが、他にもシングルリザルトを積み重ねて堂々の2位で二色の浜に乗り込む。
来季に向けて期待が高まる選手だけに、ベテラン勢を抑えてランキング2位を死守してほしい存在だ。
本人コメント
去年までは3年連続ランキング6位でしたが、今年は最終戦を残して2位。シクロクロスも4年目になり、いろいろとサポートしてくれる方が増えてきたおかげかと思っています。
とはいえ3位の村田さんとは12点差。4位以下は10点刻みです。着順1つならなんとかなる差ですが、守りに入っては面白くないので普通に攻めます。
1位のすくみずさんは確定なので、笛木村田の2位争いを最終戦の見どころにしてもらうとよいかもしれません。乞うご期待。
川村誠の好敵手、村田憲治
先日宇都宮で開催された全日本選手権で、35-39歳カテゴリーを含む4シーズン連続の男子マスターズ全日本タイトルを獲得した村田憲治(岩井商会レーシング)
しかしながら、リザルトを読み返してみると意外なことが見える。村田は2021年11月の美山以来、関西シクロクロスシリーズ戦での勝利から遠ざかっているのだ。
その前回優勝した2021年美山大会でのスプリントにみられるように、人一倍の負けず嫌いを誇る村田だが、今シーズンシリーズ戦での表彰台獲得は同じ美山での一回のみ。堺浜をはじめとしたパワーコースでは、苦戦を強いられているように見える。
全日本選手権に照準をあわせての動きといえばそれまでだが、関西シクロクロスファンは、川村との優勝争いを期待している。
本人コメント
信太山でのレバー折れトラブルが痛かったですが、他は安定して高順位を取れています。笛木君とはわずか12点差。桂川で差を縮めることができました。二色の浜で逆転狙います。
力強さと粘り強さの腰山雅大
今季関西シクロクロスE1を走る選手で、もっとも力強い走りを見せているのが"Kossy"腰山雅大(All-City Cycles / 662CCC)。
沢田時(宇都宮ブリッツェン)に指導を受けてから、安定してシングルリザルトを残すようになり、昨季の関西シクロクロスで総合8位を獲得。今季は力強さが増し、開幕戦 御坊と第7戦 信太山で3位、第8戦 富田林では2位という好成績を収めている。いくつかのレースで大きく順位を落としているが、今季のMVPともいえる活躍ぶり。
パワーコースとなる砂浜でも、そのパワーを存分に活かした走りを見せてくれるだろう。
本人コメント
昨年の千秋楽桂川。初の総合表彰に並んだその足で、革ジャンをオーダーしに行った。南堀江のLewis Leathers大阪店。英国パンクス御用達なロンジャンの中でも、特段ハードコア勢に人気の馬革だ。納期はちょうど1年後。できたての一張羅に身を包み、もう一度この総合表彰に戻ってくると誓った。
革ジャンとはファッションなのだろうか。馬革は、夏は暑く冬は寒い。硬く動きづらい上、その黒光りは見る者を威圧する。機能性に富み周囲と調和する現代の洋服とは、遠くかけ離れている。それは流行というより個性の表現そのもの。誰がどう思おうが私はこれを選び、誰がどう言おうが私はこれを着る。どうだろう、鉄フレームやシングルスピードのような存在を思い起こさせないか。
シクロクロスを始めて10年。ギアのないシングルスピードで走ると決めた私の意志は、途切れることなく今日も続いている。坂を登りきれない日もあった。変哲のない舗装路を200近いケイデンスで走った日もあった。誰がどう思おうが私はこれを選び、誰がどう言おうが私はこれでレースを走る。私はこれまでの活動を讃える意味で、革ジャンを着て総合の表彰に立つと決め、また365日粛々と研鑽の日々を送ってきた。それもあと1戦だ。
千秋楽を週末に控えた今日、1通の便箋が届いた。「日頃よりLewis Leathersをご愛顧頂きまして誠に有難うございます。昨冬にオーダーを頂きましたお客様で納品に遅れが出ております。理由としましては、昨今の世の中の情勢における経済状況の悪化を原因とした人員不足、生産効率の低下……(以下略」
いまだ届かぬ革ジャンの話を聞きつけた大先輩は「いまちょうど馬に餌やってるところとちゃうか」と冗談混じりの大予言を宣っておられた。
まったらいね〜ん!
勝負師 横山航太
今季ここまで5戦に出走し、3勝の横山航太(ペダル)。今季は関西シクロクロス前日試走日のシクロクロススクールの講師を務める。
昨年末のシマノレーシング退団から練習量は減ったということだが、バリアーの乗り降りで音を立てないほどのスムーズな動きを見せる、横山らしい走りは健在。第8戦 富田林では泥コンディションの中、他選手とは違うライン取りで細かくタイムを詰めていく徹底ぶり。2012年のジュニア、2016年のU23で全日本タイトルを獲得した勝負師は、初開催の二色の浜をどのように攻めるのか。堺浜で先行を許した副島達海(大阪産業大学)との争いに注目したい。
本人コメント
今季はこれまでと生活が変わったりなどで大変でしたけど、5戦3勝と悪くない成績を取れて良かったです。
シリーズポイントは全く意識してなかったですけど、いざ可能性が見えてくると欲が出ますね(笑)
今季の有終の美を飾れるように頑張ります!
5人の動きをかき回すか? 副島達海
U23初年度の2021-2022シーズン関西シクロクロスシリーズチャンピオン、副島達海(大阪産業大学)。今季は前半にJCXシリーズへの参戦を増やしたため、関西ランキングこそ6位だが、シーズン後半、全日本選手権で悲願のU23タイトル獲得以降、ノリに乗った走りでギャラリーを沸かせている。
第9戦 堺浜、第10戦 桂川と連勝して迎える千秋楽。優勝しても関西ランキングは4位止まりとなるが、上位4名のポイントをどれだけ奪ってくるのか。同じく砂浜のマイアミで優勝しているだけに、ここも優勝といきたいところだろう。
本人コメント
今季の関西シクロクロスは後半からの参戦でしたが、皆様の熱い応援のおかげでマイアミ、堺浜、桂川と調子よく3勝することが出来たため、ありがたいことに上位争いに参加しております。7日から10日夜まで、学校のスキー学習があるので、とりあえずそこで怪我せず、元気に帰ってきてレースに挑みたいなと思います(笑)
12日も、たつーみタオルをお持ちの方はご準備を! よろしくお願いいたします。
シリーズ表彰式と記念撮影
E1の他、W1、M1の合計3カテゴリーでそれぞれシリーズ表彰が設定されており、最終戦である二色の浜では年間表彰式が行なわれる予定だ。10月から行なわれてきた11戦に及ぶ熱い闘いを振り返るとともに、今季のチャンピオン、入賞者を称えシーズンを締めくくり、全員揃っての記念撮影を楽しもう。
E1レースの出走は2024.2.12(月休)-13:30。大会のダイジェストはbikintvのYouTubeに当日アップされる。
TEXT&PHOTO by bikintv
著者プロフィール
樋口準人(ヒグチハヤト)
老舗YouTubeチャンネル「bikintv」創始者。いつも目立たずひっそりとレース会場に出没。2023-2024シーズンより関西シクロクロス公式ショートムービー制作担当。